「贋作師」

「贋作師」 篠田 節子

「生き過ぎた」という遺書を残して自殺した画家。
かれの遺作の修復を依頼された修復師の成美は、その画家の死、そして彼の弟子にして成美の美大時代のライバル、慧の鉄道自殺の真相を知るために行動するのだが…というミステリー。

篠田節子さんは好きな作家の一人で、しかもいままでたぶん15冊以上は読んだけれども1作たりともハズしたことがない。
しかしこの作品は残念ながら好きではなかった。

グロい。グロすぎる。
修復作業の描写の細やかさや、息をもつかせぬストーリー運びで読むものを引き込む力はやはりさすがですが。
愛の物語ではあるのだけれど。
ホラー、スプラッタ系が得意な方にはおすすめかな。わたしは苦手です。

☆☆☆

| | コメント (0)

「葉桜の季節に君を想うということ」

「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午

このタイトルから想像するとしたらどんな内容を思い浮かべますか?
はっきりいってその想像は完璧に裏切られるとおもいますが。

一筋縄でもふた筋縄でもいかないミステリー。ラストは度肝を抜かれます。
いままで読んだミステリーでは味わうことのなかった驚き。そして、共感。
とくに最近自分がばくぜんと感じていたことがぴたりと言い表された感じがする。

いろいろな世代の人に読んで欲しい力作です。
ほんとは☆5つとしたいところだけど、人が情け容赦なく死にすぎるところが好きになりきれないのでマイナス1。

☆☆☆☆

| | コメント (0)

「歳月」

「歳月」 司馬遼太郎

たまたまつけたNHKの番組で、日本の司法制度の祖、江藤新平の物語を放映していたのを見て、この人物に興味を持ち、読んでみる。

佐賀の非常に貧しい下士の家に生まれ、3度の食事もままならぬような暮らしをしていた江藤は、やがてその類まれなる頭脳と才覚をもって司法卿にまで登りつめ、司法制度の骨格をつくる。
そして所詮は幕府に取って代わって薩長が私物化していた政府をただし、その正義感から非道なふるまいをしていた要人を断罪するも、征韓論に敗れて佐賀へ帰る。

かれは薩摩の大久保利通によって、法律を無視した死罪になり(このあたりがもと司法卿としては非常な皮肉)非業の最期を遂げるのだけれど、ほんとうに新政府転覆をたくらんでいたとは思えない。
むしろ、不平士族を持って反乱を起こすのではないかという「疑い」だけで、新政府に先制攻撃を仕掛けられ、あれよあれよというまに転落せしめられたという気がする。

ものすごく頭のいい、しかし今風に言うと「空気の読めない」ひとだったという印象でした。
それにしても、なにより日本のことを一番に考えていた人だなあと。自分の保身や個人の幸せなどよりも。
幕末や維新のころにはこういう人物が数おおくいますね。

しかしこれをよんで、薩摩の大久保利通がかなり嫌いになりましたね。(司馬さんも文章の中で徳川家康と大久保利通ぐらい、その功績の割りに好かれていない人物もいない、というふうに書かれていますが)

☆☆☆☆

| | コメント (0)

わくわくの種

最近わたしは庭で野菜を育てています。田舎なので庭だけは広い。
いま収穫できるのはきゅうり、ピーマン。プチトマトも色づき始めました。どれもみずみずしくておいしいー
ささやかな数ではありますが、それでもお弁当の一品や、酒のつまみの彩りくらいはりっぱに役目を果たしてくれるのです。
じゃがいももぼちぼち収穫できるし(葉が枯れたのを試しに掘ったらちっちゃかったけどwobbly)、とうもろこしも穂が出てきたし、ちびちびなすもみつけた。

わくわくの種は、自分で蒔いて090628_101030 090615_084747 育てなきゃね。

| | コメント (0)

「ほんとうの環境問題」

「ほんとうの環境問題」 池田 清彦 養老 孟司 著

たまにはこういう本も読むのですよ。
スケールの大きな問題なので、感想をまとめにくいのですが(汗)。

いま世界中で問題になっている地球温暖化問題。そしてその防止のためにCO2削減。
そのためにわたしたちは、日々ごみの分別をしたりエコバッグを持っていったりと瑣末な努力を重ねているわけです。

でもこの本を読むとそういった問題は、たとえば排出権取引などの政治的な利害がからんだ問題だということがわかる。
そして、「おひとよしな」日本は、外国のいうなりにどんどんCO2排出量の削減目標を上げられて、しかも日本の省エネ技術はもともと進んでいるからこれ以上の省エネはむずかしくて、結局はお金をだして排出権取引をしなければならないと。(もうすでに毎年大赤字なのに…)

そもそも長い目で見たら、ほんとうに地球は温暖化しているのかどうかはわからないし(科学者でも意見が割れているというのは、以前に聞いたことがあったので知っていた)、たとえ温暖化していたとしても、世間で言われているような海面上昇だとか病気蔓延だとかはあまり根拠がない、あるいはたいした問題ではないという。
さらに少子化にしたって、人口は増加しないほうが消費エネルギーだって少なくてすむのだから問題はないと(これについてはちょっと乱暴な意見では?とおもうけど)。

ともかく、この本を読んで思ったことは、石油は必ず枯渇するし(代替エネルギーも、どのみちエントロピーがでるなど別の問題を生んだりすると養老さんはいう)、日本の食料自給率は低いし(そして廃棄率は高いし)、ごみも増え続けているのだからそれらを何とかしなきゃいけないということ。
そしてとりあえず私たちにできることは、便利さに慣れすぎた自分のからだを鍛えるために、冷暖房を最小限にして、余分なエネルギーを使わなくてすむようにするとか、食事は必要量だけを用意し、のこさずちゃんと食べるとか、そういうことではないかとおもった。
ごみの出し方についてはリサイクルすればいいというものでもないみたいですが(アルミ缶のリサイクルは有効らしいけど、ペットボトルは生ごみと一緒に燃やすほうがいいらしい)、とりあえず自治体の決まりに従うしかないし。

あとはもっと知識を身につけて、選挙の時には環境対策に真剣に取り組むようなひと(政党)に投票するとか?むずかしいけれど。

☆☆☆

| | コメント (0)

「女信長」

「女信長」 (黒木メイサ 中川晃教主演、青山劇場)を見てきました。

もちろん、アッキーめあてです(笑)。

織田信長が女だったという設定で、戦国の動乱の中、女ならではの一途さで天下泰平を願い闘い続けるも、女ゆえに苦悩し、やがてその身を滅ぼしてゆくというストーリー。

正直、心を動かされることのない舞台でした。

メインの役者さんがつねにスポットライトを浴びていて、いちいち正面を向いて決めポーズで決め台詞をいう、斬られる人たちが、全身切り刻まれながらも「ここが見せ場」とばかり長々ときめ台詞をさけぶ(「まだ死なないのー」と思うこと数回)。
そういう「いかにも」なかんじの演出ひとつひとつがなじめず、最後まで話に入り込めなかった。

芝居っていうより「ショー」だと思えば楽しめたのかもしれないけど。
殺陣も多くて絢爛豪華だったし。

メイサちゃんは、きれいだしスタイルもいいしダンスもうまい。絵になる女優さんですね。かっこいいー
演技のほうも、男前な信長と、かわいくて色っぽくて、そして切ないおちょうを見事に演じていて、堂々としたものでした。

アッキーもストレートプレイがすごくうまくなってて、安定した演技。
歌もさすがに上手で聞かせる…けど今回はあまり心には響きませんでした。「はいはい、うまいねー」ってなもんで。
これはひとえに「オン・ステージ」的演出が好みでなかったせいかも。

石田純一はへたすぎ。ずっと「石田純一」だった気がします。もう役者としてはベテランのはずなのに…

ギャグもありましたが、くどくてあまり笑えなかった。とくにルイス・フロイス。うるさくて、「もういいよ」ってかんじでした。

秀吉はよかったなあ。多少なりともじーんときたのは秀吉と光秀のせりふだけだった。

というわけで、個人的にはワースト3ぐらいには入りそうな勢いです。
中川君には夏の舞台(死神の精度)でリベンジしていただきましょうか。

| | コメント (0)

「光と影」

という東海テレビの製作した番組を見ました。
1999年におきた山口県光市母子殺害事件の弁護団を追ったドキュメンタリーです。

正直わたしの今までの視点は(おそらく世の中の大多数の人がそうであるように)被害者遺族側のものでした。
広島での差し戻し裁判の被告の供述(ドラえもんとかお母さんとか)にも疑問を感じていましたし、そういう供述を引き出して罪を軽くしようとした弁護団(という印象だった)にもいい感情はもてませんでした。

しかしこの番組を見て、あくまでも真実を追究したいという弁護団の姿勢にこころを打たれ、自分の思慮の浅さに気づかされました。
つよい信念がなければけして出来ない仕事。しかも勝ち負けで言えば彼らは負けた側なのです。
こういう番組を制作した東海テレビにも敬意を表します。本来マスコミとはこういう仕事をすべきなのでは。

彼らに対する世間のバッシングがいかに強烈だったかいうこともあらためて知りました。
これらの手紙やメールを書いた人たちは、ある意味正義感のつよい人ではあるのだろうとおもいます。でもやはり物事を一面からしか見ていないといわざるをえない。
なにより匿名性を隠れ蓑にした誹謗中傷というのは醜い。

話はすこし飛びますが、誹謗中傷というと、村上春樹さんの短編「沈黙」を思い出します。
とある噂がきっかけでクラス中から無視されるという経験をした青年の物語なのですが、ラストの彼の言葉が胸にしみる。

「僕が本当に怖いと思うのは、青木のような人間の言い分を無批判に受けいれて、そのまま信じてしまう連中です。自分では何も生み出さず、何も理解していないくせに、口当たりのよい、受け入れやすい他人の意見に踊らされて集団で行動する連中です。(中略)彼らはそういう自分たちの行動がどんな結果をもたらそうと、何の責任もとりゃしないんです。本当に怖いのはそういう連中です。」

短編集「レキシントンの幽霊」に収録されています。ご興味のあるかたはぜひ。

| | コメント (0)

裁判員、やりたい?やりたくない?

世間的には消極的な意見が多いみたいだけれど、わたしは時間がゆるせば参加してみたい。

人を裁くことが不安っていうのはあるけど、一人で裁くんじゃなくて話し合うわけだし、最終判断は裁判官がするんでしょう?
法律知識もないし感情的になる危険性もある…けど、
そもそもいままで専門家だけでおこなわれていた裁判に一般人を参加させる意図って、そういういわば「人間的な部分」を、裁判に反映させる必要もあるということなのでは??
もちろん裁判員である以上無責任な発言は出来ないし、より深く勉強したり事件について知識を深めたりする必要はあるけど。

というわけでわたしはけっこう積極派です。

ただ、おカミからの罰則付き命令、というやり方に関してはひっかかるな。

コネタマ参加中: 裁判員、やりたい?やりたくない?

| | コメント (0)

「容疑者Xの献身」

キャラメルボックスの舞台「容疑者Xの献身」をみてきました。
ネタばれあり。とくに原作を読んでいない方は、下記は読まないほうがいいかと。













原作を読んでいたので内容はわかっていたのですが、原作以上に心を揺さぶられた舞台でした。
ふつう原作を読んでから映画なり舞台なりを見ると、たいてい裏切られるのですが、この作品に関してはべつ。
すごくよかったです!

なにより西川さんの演じた石神がすばらしい。
原作を読んだときには正直「こんなやついるかよー」と思ってしまったのですが、舞台の石神には感情移入してしまった。
靖子は石神にとって生きる希望そのものだったんだと。

天才的頭脳を持つ石神だけど、ひとの心に関してはまったくの無知だったといわざるを得ない。
たとえ彼の第二の殺人(これに関してはやっぱり受け入れられない)を靖子が知らされなかったとしても、彼女が石神のことを忘れて工藤と幸せになれるわけがないのに…
ラストの石神の慟哭が胸にしみます。

キャラメルとしては非常に異色な作品。でも結果としては大成功じゃないかな。
ファンタジー作品のときによくある不自然なハイテンションもなく、叫ぶこともなく、とても心にしみるいい芝居に仕上がっていたとおもう。
まさに新境地。

西牟田さん、とてもよかったです。ちょっとした表情の変化とかしぐさの表現がとてもゆたかな女優さんですね。

川原和久さん、刑事役が板についてて渋くて素敵でしたが、見せ場が少なくてちょっともったいなかったかな。

岡田達也さん、とてもよかった。素敵でした。
福山君と比べられることで(といってもわたしは福山のガリレオを知らないんですが。あくまで一般のお客さんにはね)、相当のプレッシャーがあったのではとおもうけど、ちゃんと彼なりの湯川になっていました。

とにかく、いい舞台でした。大満足!!

| | コメント (0)

「悼む人」

「悼む人」 天童 荒太

一面識もない死者を「悼む」旅を続ける青年、静人。
どう死んだか、ではなく、生きているあいだに誰を愛し、誰に愛され、どんなことをして人に感謝されたことがあるかだけを関係者に尋ね、そのことをもとに死者を悼み、覚えておこうとする。
次から次へと死者を探しては悼む旅をつづける彼を、他人はおろか家族でさえ理解しきれずにいろいろな摩擦を生むのだが、彼は旅をやめることができない。そんな彼を哂いつつ、疑いつつ、惹かれていく人間たちが現れて…。

読み終わったあと心に深くのこる何かがある。
重い、人間のこころの深淵にふれるような物語。
とくに、妻に「殺された」男、甲水朔也が印象的だった。

たぶん誰の心にもほんのすこしだけ、静人はいるんじゃないかな。
だから人はかれに惹かれてゆくんだと、今日もテレビで流れる痛ましいニュースを聞きながらおもった。

☆☆☆☆☆

| | コメント (0)

«「ナラタージュ」