「ウーマン・イン・ブラック」
この作品を観るのは(斎藤 上川ペアでは)初演、再演にひきつづき3回目なのに、今回が一番こわかったのはなぜ?
どの場面もせりふも見覚えがあるのに…。とりたてて変わったところは気づかなかったのに…
子ども部屋に向かうドアに手をかけた瞬間に鳴り響く悲鳴、キップスを誘い込むかのように彼の動きにあわせて鳴ったり止んだりするロッキングチェアの音、懐中電灯に照らされる黒い服の女の顔、流砂に飲み込まれる馬車のポニーのいななきと人間たちの絶叫…
観ているあいだじゅう胸がどきどきしっぱなしで、気の休まる暇がありませんでした。眼つぶって耳ふさごうかと思ったぐらい…(もちろんそんなもったいないことはいたしません)幕が下りた後もしばらくどきどきがおさまらず。
この作品はほんとうに舞台でしか味わえない醍醐味にあふれている。
それにしてもヤングキップスの素敵なこと!
日本人俳優であんなに英国紳士の似合うひとって思い当たらないんですが。
指を鳴らしたり肩をすくめたりする、基本日本人だとどうしても不自然になってしまうようなしぐさが、ほんとうにさまになっている。
コートを着たりマフラーを巻いたり、帽子を目深にかぶったり、帽子に手をかけて目礼したり…
そういう動作の一つ一つもスマートで気品にあふれていて、いかにもイギリスの紳士然としていて。
言葉遣いもふだんの我々の会話とはかけ離れているのに、違和感はまるでなく、むしろうつくしい音楽を聴いているかのように心地よい。
(あのシェイクスピアのせりふ!いつか上川さん正統派シェイクスピアにも挑戦してくれないかなあー。敬遠しがちなシェイクスピアも上川さんなら引き込まれそう)
斎藤晴彦さんの、はじめはいかにも素人の「演じてます」的雰囲気から、憑き物がついたように役になりきって、いつのまにか観るものをぐいぐい引き込んでいく演技はもうさすがとしか言いようがない。
とにかく、すばらしかった、すべてが。
これがロンドンにいくんだなあとおもうと、誇らしい気持ち。はやくロンドンの観客に見てもらいたいような。
パンフでの斎藤さんの「上川さんのようなプロフェッショナルな役者であり、なおかつ人間性も豊かな方」という言葉がほんとにうれしくまた誇らしかったです。
帰ったら子どもたちがキャラメルのDVD(風を継ぐ者)を観ていたのですが、なんだかこの舞台を見たあとでは正直キャラメルの舞台が「おもちゃ」のように見えてしまった。
上川さんの大きさが、もうキャラメルの枠には納まりきれなくなっているような気がしてしまって。(もちろんキャラメルにはキャラメルのよさがあるには相違ないのだけれど。)
パンフのなかでの上川さんの、「自分のキャパシティをフル活用する場がどれだけあるかと言えばそう多くはないけれど、この稽古場では持てるモノ全てを使っている」という言葉にもそういうことを感じましたね。
それとともにそんなにすばらしいこの作品が、彼のライフワークになっていけばいいなあと思いました。
斎藤さんも「役者冥利に尽きる作品」とおっしゃってますし。
一週間後もう一度観にいきます。ああはやくまた会いたい。
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