「命」 柳美里 著 を読む。
柳 美里さんはむかし芥川賞を取った「家族シネマ」を読んだのだけれど、あまりぴんと来ず…、というよりも苦手なタイプだった。
とくにそのなかにいじめを題材にした短編があって、それがみょうに陰気で無機質な文体で、読むと暗い気持ちになってしまい、以後敬遠していた。
しかし前述の「雨と夢のあとに」がかなり好印象だったのでまた読んでみようと思い立つ。
この本はいぜん話題になったのでご存知の方も多いと思うけれど、
柳さんの所属していた劇団「東京キッドブラザーズ」の作・演出家であり、柳さんと長年にわたりふかい(男女の、だけではなく柳さんいわく「一言ではいえない関係を斬り結んだ」)関係にあった故・東由多加さんの末期がんとの闘病、、それと同時に発覚した柳さんの妊娠と出産(父親は泥沼化した関係の不倫相手)、そのふたつの顛末を描いたドキュメンタリーである。
作家として2年先のスケジュールまで満杯、不倫相手とは養育費や生まれてくる子供との面会の約束をめぐり泥沼化、もと恋人であり師匠である東さんは8ヶ月の余命宣告を受け、というまさに八方塞ののっぴきならない状況で、それでも東さんとともに子供を生みそだてようとする著者の生き様に感銘を受ける。
しかもそんなことをしている著者はけっして特別に強い人間ではなく、こどもの「父親参観日」の心配をしたり、こどもの沐浴をさせるのに耳に水を入れてしまったりして「どうしようー」とおろおろしている、ごく普通の母親なのだ。(生い立ちはごく普通とはいえないようだけど)
ただ気になったのは、柳さんも彼女の家族も母子家庭であることを重く捉えすぎていること。いまどき母子家庭なんてごまんとあるから仲間は大勢いるし、そんなに心配しなくともこどもの存在がすべて助けてくれる、なんて楽観的に過ぎるかな?
感情はあくまで廃した、けして明るくはない文体で、淡々とかかれているのだけれど(でも内容は壮絶)、読み終わったときにはその生き様に圧倒され、生きる力がわいてくる。
ちなみに4部作であり、この「命」を筆頭に「魂」「生」「声」とつづく。
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