カテゴリー「作家 あ行」の記事

「葉桜の季節に君を想うということ」

「葉桜の季節に君を想うということ」 歌野晶午

このタイトルから想像するとしたらどんな内容を思い浮かべますか?
はっきりいってその想像は完璧に裏切られるとおもいますが。

一筋縄でもふた筋縄でもいかないミステリー。ラストは度肝を抜かれます。
いままで読んだミステリーでは味わうことのなかった驚き。そして、共感。
とくに最近自分がばくぜんと感じていたことがぴたりと言い表された感じがする。

いろいろな世代の人に読んで欲しい力作です。
ほんとは☆5つとしたいところだけど、人が情け容赦なく死にすぎるところが好きになりきれないのでマイナス1。

☆☆☆☆

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「オーデュボンの祈り」

「オーデュボンの祈り」 井坂 幸太郎

巷で評判の高い伊坂幸太郎さん。わたし自身は「チルドレン」「重力ピエロ」につづいてまだ3冊目だけれど、2作ともわりと好きな話だったのでまた読んでみる。
おもしろかった。ミステリー仕立てのファンタジーというかんじで不思議な世界に浸りながらどんどん読み進められる。
でも警察官城山の異常なサディストぶりには、すごくいやあな気持ちになった。そのあたりが完璧にはこの作品を好きになれない理由。
喋る案山子、優午のやさしさにはすごく癒されましたが。
あと案山子が生命をもつ仕組みがいまいち納得がいかなかったな。

☆☆☆☆

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「下北サンデーズ」

「下北サンデーズ」石田衣良 著

女子大生のゆいかは、小劇団「下北サンデーズ」の芝居にあこがれて劇団の門をたたく。
演劇経験のない彼女だったが容姿にも度胸にも恵まれていたため入団を許され、やがて看板女優の座を確保する。
しかし演劇だけではたべていけない役者たちは個々にメジャーデビューを狙い、成功するものも出始め、演出家も業界人と遊びあるいたりとだんだんバラバラになってゆく。
そんななか、ゆいかは劇団のためにメジャーデビューし、スターダムの座にのし上がろうとするのだが。

下北サンデーズはどうかわからないけれど、「おこさま企画」とか「たけのこホテル」とか、演劇好きにはたまらない実在劇団のパロディがたっぷり。石田衣良さんて小劇場好きだったんだ。
わたしはマニアではないのでわからないけれど、知ってる人が読めばもっと楽しめるんじゃないかな?

お話的には第三舞台の「リレイヤー」みたいな、小劇団の矛盾を描いた物語のわりに、ラストはまとまりすぎで(しかも事態はぜんぜん解決しない)釈然としなかったけれど。

ともあれ小劇団が食えないのは事実だろうな。
観客動員数1位を誇るキャラメルボックスさえ看板役者がバイトしたりしてるくらいだし。(数年前に存続の危機もあったなあ)。

☆☆☆

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「うつくしい子ども」

「うつくしい子ども」 石田 衣良

緑豊かなニュータウンを騒然とさせた九歳の少女の殺人事件。
犯人として補導されたのは、ぼくの十三歳の弟だった!
崩壊する家族、変質する地域社会、沈黙を守る学校…。そんななか彼は弟がなぜそんなことをしたのかを友達とともに調べ始め、やがて思いもかけない真実がうかびあがってくる。

殺人者の家族が、この現代の情報化社会においてどんな過酷な目にあうか。そのことにここまで焦点を置かれたミステリーはめずらしいのでは?
逆境にもまけず、いじめなどの幾多の試練をのりこえて、果敢にたたかう主人公には胸のすく思いがする。
子供が殺される話なので読後感はあまりよくはないけれど、やはり一気に読める面白さ。
「美丘」とは真逆にちかい作品で、わたしはこちらのほうが数倍面白かった。恐ろしい話だけれど。

☆☆☆☆

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「美丘」

「美丘」 石田 衣良

難病で亡くなった大学時代の恋人、美丘を回想形式でつづった哀しくも美しい物語。

自由奔放に生きるがゆえに周りの人間たちをてこずらせる美丘。
つねにトラブルメーカーで、はた迷惑な、でも強烈な魅力を持つ美丘にひかれてゆく主人公だったが、じつは彼女は難病に感染していて、少ない生を精一杯生きていた…。

つねに過去形で、美丘に語りかけるかたちで語られるため、全体が喪失感に満ちている。
その喪失感が、すこし違和感があるというかセンチメンタルに過ぎる気が。あくまで個人的な感想ですが。

でも一晩で読んでしまったから、小説としては吸引力があると思う。そしてこころに残る力も。

☆☆☆

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「まひるの月を追いかけて」

「まひるの月を追いかけて」 恩田 陸著

主人公は離婚歴のある会社員の静。彼女が腹違いの兄、研吾が失踪したというニュースを聞き、彼の恋人である優佳利とともに研吾の足取りを追って奈良を旅することに。

研吾とも優佳利ともろくに面識のなかった静は、とくに切羽詰った気持ちでもなく、なんとなく、というかたちで旅を始めるのだが、やがておもっても見なかった事実が次々と判明していく…

旅情豊かなミステリー。ドラマにしたら面白そうだ。

ミステリーといっても殺人事件などは起こらず(たしかに人は何人か死ぬけど)、登場人物たちの関係や気持ちの流れに重点を置いた物語。

さほど派手な話ではないけれど、さすがに恩田陸さん、巧みな筆致で読むものを飽きさせない。おもえば恩田陸って、そういう物語多いような。

ただ、ラストはちょっとしっくりいかなかった。

☆☆☆☆

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「明日の記憶」

「明日の記憶」 荻原 浩著

いぜん見た映画が印象的だったので小説も読んでみる。

50歳にして若年性アルツハイマーに冒された会社員の物語。
はじめは芸能人の名前が思い出せなくなり、知っているはずの言葉が出なくなり、やがて何回も行ったことのある場所で迷い、そのうち過去にしたはずのことを言われてもそのことじたいまったく思い当たらなくなってしまう。

はじめは「あるあるー」なんて笑いながら読んでいたわたしも、「自分もやばいかも」とページを繰る手が止まらなくなった。

とくにリアルな日記形式で書かれた部分はぐんぐんひきこまれる。名作「アルジャーノンに花束を」を髣髴とさせる部分も。
この作家さんはお初だけれど、すごく筆力のある人だと思う。

ラストは切ないながらもどことなく希望が。

☆☆☆☆☆

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「砂の女」

「砂の女」 安部公房

昆虫採集に行った教員の男が、道に迷って砂漠の中(というか下?)に建つ一軒家に宿を借りる。
しかしそこは夜通し砂かきをしなければ家が埋まってしまうというおそろしい家で、男はその労働のためにだまされて監禁されたのだった…

読んでいて映画「ミザリー」を思い出した。
あれは人気作家が雪の中で事故にあって、頭のおかしい女に監禁されて、彼女の望むような作品を書かされる、というこわーい話でしたが。

ホラーであり、官能小説であり、ファンタジーのような要素もあり。
純文学はあまり読まないわたしでも読み通せた。
昔の作品らしく、文章が緻密でうつくしい。

でも怖い…まさに蟻地獄だ。

ラストは「人間てこういうものかも?」と思わせられた。人は本当は自由など欲していないんだろうか?

☆☆☆

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「重力ピエロ」

「重力ピエロ」 伊坂 幸太郎

半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。
春は、私の母親がレイプされたときに身ごもった子である。
ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。
町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。
連続放火事件と謎の落書き、レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯し…。

この物語の中に何回か出てくることば。
「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

この物語そのものが、本当に深刻なことを、軽く、陽気な、ユーモアあふれる文章で描いている。

レイプという犯罪が傷つけ、損なうものは非常に大きい。被害者本人のみならず、その家族、それによって生まれた子供にまでその影響はおよぶ。
にもかかわらず、犯人の受ける罰はあまりに軽い。そのことにたいする作者の憤りが感じられる作品。

正直、男の人が書いたとは思えないぐらいだった。

ただ、ミステリーとしては途中から展開がかなり読めてしまったけれど。

☆☆☆☆

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チルドレン

「チルドレン」 伊坂 幸太郎

短編集の形をとってはいるけれど、じつはひとつのつながったお話。
日常、非日常におこるちいさなミステリーを、歯切れのいい、ユーモアたっぷりの文章で軽快に描いてあり、すいすい読める。

主人公は話によって入れ替わるけれど、表題作の「チルドレン」は家庭裁判所の調査官が主人公。(そう、知る人ぞ知る「少年たち」ですね!主人公は広川のような熱血調査官というわけではありませんが)

「大人がカッコよけりゃ子供はぐれねえんだよ」という、型破りの調査官、陣内のキャラが面白かった。

冒頭の銀行強盗の話も面白かったな。盲目の青年、永瀬くんがなかなか素敵。

☆☆☆☆

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「ネクロポリス」

「ネクロポリス」恩田陸 著 を読む。☆☆☆☆

年に一度、「あの世」から死者が実態となって現れるという島、アナザーヒル。
その「お客さん」を迎える行事、「ヒガン」にはじめて参加した日本の学生、ジュンは彼自身も気づかない特殊能力で死者を、そして波乱を呼び寄せ、危険に巻き込まれてゆく…

ミステリー仕立てでどきどきわくわくしながら一気に読める。そしてこの世のどこかにほんとうにこんな場所があるかもしれないという気持ちになる。生の世界と死の世界はじつは紙一重で隣り合っていて、このようなことが現実に起こりうるかもしれないような…

ただ、ラストはちょっと、収拾付かなくなりすぎかな。
最後の数ページのところでもあらたに波乱が起きて「これどうまとめるの?恩田さん…」と思ってたらやはりまとまらなかった、というかんじだった。

でも面白かった!

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「チョコレートコスモス」

「チョコレートコスモス」 恩田陸 著    ☆☆☆(満点5つ)

とある大学の演劇サークルに入部してきた少女、佐々木飛鳥は役者として天賦の才能を持っていた。そして彼女はとある大役のオーディションを受けることになり…

演劇もので、これをかくために恩田さんはキャラメルボックスに取材をしたらしい。
だから小劇場が舞台なのかなと思ったらそうではなかったけど。

恩田陸版「ガラスの仮面」のような話。
オーディションの場面で出演者たちがそれぞれ工夫を凝らして演ずるところは面白いし、主人公(?)の飛鳥が並みいるベテラン役者たちをしのいで、あっといわせる斬新な演技をするところなど、さすがに恩田陸さんらしく引き込ませる。ベテラン女優同士の水面下でのぶつかり合いも迫力があるし。

ただ、お話としてはいまひとつ核になるものがすくなかったかな?
少女の天才性と、それだけでは成り立たない役者という仕事の深み、ということが語られただけで終わっているから。
佐々木飛鳥はこれからどのように成長していくのだろうか。これから先の物語が読んでみたいと思った。(それだと長いお話になるかな??それこそ「ガラスの仮面」みたいな。)

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「赤い長靴」

「赤い長靴」 江國 香織 著 を読む。

結婚12年目の夫婦の話。
おもに妻の視点だけれど、ときどき夫の視点になったりしながら、江國さん独特の繊細で美しい文体で淡々と日常がつづられている。
一貫して語られていることは、「夫がいかに妻のいうことを聞いていないか」ということ。あまりにもそうなので妻はくすくす笑うしかない、というような。
そのままさしたる事件も起きずに日々は流れてゆく。

で、この夫婦にはアイがあるのかないのかそこら辺がよくわからないのだった。でもよくありそうですよね、こういう夫婦。

でも江國さんの本を読むと、何気ない日常がいとおしい、たいせつなものに思えてくるから不思議。

☆☆(満点☆5つ)

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「蛇行する川のほとり」

「蛇行する川のほとり」 恩田 陸 著 を読む。

舞台はとある女子高。
絵の才能のほかはとりたててとりえのない毬子が、夏休みに憧れのうつくしい上級生香澄から、「演劇祭の舞台背景の絵を泊りがけでいっしょにかかないか」と家に誘われる。
そしてそこには彼女の親友である、やはり美しい上級生芳野もいた。さらに彼女たちのいとこであるすこしなぞめいた少年ふたりも。
非日常的なシチュエーションに喜び、胸ときめかせる毬子だが、じつはその家は、過去に忌まわしい事件がおきた場所だった…。

美しい上流階級の娘に美少年と、一昔前の少女小説のような雰囲気。でもだからこそ不吉な予感がつねにただよっている。
そして過去におきたふたつの殺人事件のなぞがしだいにあばかれていく過程はおもしろくて一気に読み進められる。
「6番目の小夜子」の雰囲気にも近いかな。「なにかが起きるかもしれない」という恐怖にとらわれる、という点で。
ジャンルとしたらミステリーになるのでしょうが。

しかしラストはすこし納得いかなかった。8歳の少女が…というところにリアリティが感じられなくて。
少女というもののもつ魔性かな?

☆☆☆

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「夜のピクニック」

「夜のピクニック」 恩田 陸 著 を読む。

とある高校の年中行事である、昼夜丸一日の歩行祭。
肉体的には過酷な催しだけれど、友情、恋愛を深めるにはもってこいの行事だ。
その歩行祭で貴子はひとつの賭けをする。
それは自分のことを憎んでいるらしい、じつは異母兄弟のクラスメート、西脇融に話しかけて返事をもらうことだった…

雰囲気的には「ネバーランド」に似ている。高校生たちのさわやかな青春物語。
かなり好きなテイストの話だった。
登場人物たちもすごくいい子達で、みんながそれぞれのことを思いやりあい、気遣いあっている。

ストーリー的には多少盛り上がりに欠けるけど、後味のいい物語。

多少、高校生の会話が優しすぎる、というか優等生過ぎて、リアリティがないかなあとも思ったけど。

しかし自分自身を振り返ってみると、たしかに高校生の頃って、友達がすべて、ていうかんじだったなあ。友達との交わりをいちばん重要視してた。
中学のころもそれに近いんだけど、中学はもっと自分自身のことでいっぱいいっぱいで、なかなか友達関係をたのしむ余裕がないんだよね。

それにくらべると高校は、友達に恵まれたのもあったけど、すごく友達関係を楽しんでたな。
女子高だったので「恋愛」はなかったんですけどね、しくしく。

☆☆☆☆

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「上と外」

「上と外」 恩田陸 著 を読む。

中学2年の練(れん)は、両親が離婚して、祖父祖母とくらしている。ロッククライムなどやっている、現代っ子にしてはアウトドア派の少年。
夏休みに彼は、別居中の母親千鶴子と妹千華子とともに、考古学者の父親の仕事先である中南米のG国へと遊びに行く。
が、ヘリでマヤの遺跡を観にいくとちゅうクーデターに遭い、熱帯雨林のジャングルに妹と二人で放り出されてしまい…

壮大なる冒険物語。映画を見ているような感覚で、どきどきわくわくしながらぐいぐい読み進められる。

おもしろかった!

基本的には冒険物語なんだけど、離婚した家族の再生物語でもあり、(だからといってべつに復縁してめでたしめでたしとはなりませんが)、少年の成長物語でもあり。

こういう別世界につれていってくれる物語は好き。

以前に読んだ篠田節子さんの「コンタクト・ゾーン」も、南の島にバカンスに出かけたOLがクーデターに遭遇してひどい目に遭う、という話で、ちょっと雰囲気的には似てた。(これもすごくおもしろかった!かなり怖かったけど…)
けどこちらのほうは主人公が少年なだけに、政治とか風刺の要素もあるにはあるけど、まあスペクタクル・ロマンという要素が強いかな。

中学生くらいの子供ならたぶん読める内容だと思うので、親子で読んでもそれなりに楽しいかも。かなり分厚いので、最初は覚悟が必要ですが。

☆☆☆☆☆

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「ドミノ」

「ドミノ」 恩田 陸 著 を読む。

今回からあくまで個人的趣味ですが、「面白さ」の目安に☆マークをつけてみます。
今回は☆☆☆(☆5つで満点)

東京駅を舞台に繰り広げられる、ドタバタコメディー。
ふつうなら縁もゆかりもない人々がたまたまそのとき東京駅に居合わせた、というだけで、大事件にまきこまれていく。
主な登場人物を挙げると、まずお使いに行った生命保険会社の女性社員、爆弾犯人グループ、子役オーディションにでてきた小学生ふたり、すけこましのしょーもない顔だけ男と、だまされた女、女と別れるための茶番につき合わされていた美貌の従妹、来日していた映画プロデューサー(アンドそのマル秘ペットのダリオ)と彼の案内役の霊能力を持つ女性、もと暴走族のピザ屋、短歌が趣味の老人ともと警視庁刑事たちなどなど。

個人的には爆弾犯人を公衆の面前で背負い投げにした、生命保険会社のOL田上優子ちゃんが好きでした。なんか群ようこの小説に出てくる女性みたいに豪快で親切な娘。

とにかく、勢いとスピード感があって笑える。登場人物も悪人はでてこず(っていうかいちおう出てくるけど間抜けだし)、読み終わったあとがさわやかで気持ちいい。

恩田さんの小説はどれも読後感がよくていいね。

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「光の帝国 常野物語」

「光の帝国 常野物語」 恩田 陸 著 を読む。

日本のとある地方に昔から暮らしている、ある特殊な能力を持った一族「常野」をめぐる物語集。短編集の体裁はとっているけれど、すべての話はつながっている。
途中かなりの間をおきながら読んだため、すべてのつながりを理解してなかったかもしれないけど。

受け取りようによってはSFにも、民話のような伝承物語にも、ホラーミステリーのようにも思える、ふしぎな物語だった。
日本のどこかにほんとうにこんな一族が、ひっそりと目立たないように暮らしているかもしれない。

それにしても恩田さんの本はこれで3冊目だけれど、読むときについ「これは何のマンガが元ネタかな」と思うようになってしまったのは困ったもの。
これも「ポーの一族」かな、とおもいつつ読んでしまった。ひじょうな長命で何百年も生きる一族だし。

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「六番目の小夜子」

「六番目の小夜子」 恩田 陸 著 を読む。

舞台はある公立高校。そこでは3年ごとに「サヨコ」なる役を割り振られる生徒がおり、1年間じぶんが「サヨコ」であることを知られずにサヨコとしての任務をまっとうすればその年は吉である、というジンクスがあった。
そして6番目の「サヨコ」の年、「津村沙世子」という絶世の美少女が転校してくるのだが…

高校を舞台にしたホラーもの。といっても凄惨な殺人事件やらことさら残酷な場面などはなく、「何かが起こるかもしれない」といういわば自らが作り出す恐怖、である。よくかんがえるとなんでもないじゃん、みたいな。
でもだからこそよけいこわい。

しかし恩田さんて、ぜったい少女漫画好きだよね、しかもわたしと同世代の。
前回の「ネバーランド」は「トーマの心臓」だったし、これなんてシチュエーション、名前からしてまんま「吉祥天女」(by 吉田秋生)だもの。

この話は中盤かなりの盛り上がりを見せるけれど、わりに後半は拍子抜けの感があった。というかすっきりしない。語られつくせない何かが残るのだ。それはきっと作者の意図したところなんだろうけど。

しかし「彼ら」とはだれなんだろう。わたしはあれじゃないかと思っているのだけれど…お読みになった方、お聞かせくださいませんか?

あと名前なのだけれどタイトルは「小夜子」であり、転校生は「沙世子」、学校に伝わるジンクスの「サヨコ」と、すべて字を変えてあるのはなぜか。
いろいろとなぞを残す物語である。

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「ネバーランド」

「ネバーランド」 恩田 陸 著 を読む。

恩田さんお初。イメージとしては学園系ホラー?かなと思っていた。

この小説は学園系ではあったけれどホラーではなく(多少ミステリー仕立てではあるけど)、心やさしい高校生の少年たちの友情の物語。

ストーリーは、他の学生がみな家族の元に帰る年末年始、それぞれの事情を抱えて学生寮に残る4人の(正確には寮生は3人なのだが、ひとり通学生が居付いてしまうので)男の子たちが、それまでよく知らなかったお互いの過去や、ほんとうの気持ちを知り、ぶつかりあいながらも絆を深めてゆくという内容。

4人の子達が冬休みに寮に残る、というシチュエーションからしてすでにわたし好みの話で、あっというまにおもしろく読めてしまった。

どの子達もそれなりにいろいろと問題や葛藤を抱えていて、はじめはそれらの問題から逃避していたり、表面を取り繕っていたりするのだが、いっしょに生活するうちにお互いに影響しあい、それぞれの問題と真剣に向き合ってゆく。
もちろん高校生ならではのカルイ会話や行動もたくさん出てくるのだけれど、非常に正直でマジな会話の場面もあり(ほんとうにこんな真剣な会話をするものなんだろうかとちょっと思ったけど)、どの子もキャラは違えど優しくて思いやり深く、いいなあ男同士の友情って、という気持ちになる。
後味も爽やかで、かなり好きなタイプの小説。゚

ちなみに読んでいるときに萩尾望都の「トーマの心臓」を思い出していたのだけれど、「あとがき」にもやはり「「トーマの心臓」のような、スタイリッシュで硬質的な、緊張感あふれる心理ドラマにするつもりだったのだけれど、書いているうちにだんだんほのぼのしたものになtってしまった」という一文があり、やっぱりねえ、とおもう。まあ似ているのはシチュエーションぐらいで、テイストはかなり違うけどね。
(むりやり「トーマ」にあてはめるとすると、主人公(美国)がユリスモール、岩槻がトーマまではまあいいとして、エーリクが統でオスカーが光浩?それとも寛司?いすれにしてもキャラ違いすぎだわ。)

なんにせよ、わたしはこういう閉ざされた空間のなかの、少年たちの友情(プラトニックな恋愛も含む)話が好きなので、ひさしぶりにこういう世界を堪能してたのしめた。

別の作品も読んでみたいなあ。くわしいかた、おすすめを教えてくださいー

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言いまつがい

昨日本屋で糸井重里さんの「言いまつがい」文庫版がでていたので衝動買いしてしまった。

朝起きるとまずステップマシーン(っていうんですか?足踏みするやつ)に乗りながら本を読むのが日課なのだけれど(ちなみにそのあと6時半からテレビ体操)、今日は「言いまつがい」をよみながら足踏みしていたら笑いすぎて手の力が抜けて本を持っていられなくなったので、やむなく座って読みました。

それにしても笑えますよ、これ!元気のないときにおすすめです。
うちの義母もカタカナ語によわくていつもパターゴルフを「バターゴルフ」というんだけどそのたびに「なんかべたべたぬるぬるしそうでやだ」と夫に言われている。
その手の言いまつがいはごまんとあるから、 また思い出したら書きますが、そういうのってなごむし、罪がなくていいよね。言った本人もわらってるし。(あまり長い間突っ込まれると嫌な気分になるでしょうが)

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スイートリトルライズ

「スイートリトルライズ」 江國香織 著 を読む。

江國香織さんは好きな作家の一人だが、あたりはずれがある人でもある。好みの問題だとは思うけれど…。
で、わたしはこのひとのこてこての恋愛ものが苦手。「冷静と情熱のあいだ」とかはどうもだめだった。(辻仁成さんとダブルで出して映画化もされたやつ)
「神様のボート」はすきだったけど。

この作品もどちらかというとこてこての恋愛もの。
テディベア作家であり料理研究家でもあり、そして主婦業も完璧にこなす、おまけに美人のカリスマ主婦(?)瑠璃子とその夫聡。
なんとなくしっくりいっていない割には愛し合っていないわけでもない二人がダブル不倫にはしる。(要約するとなんかすごい)
これが江國さん独特のしずかな、洗練された文体で淡々と語られる。
話としてはなんだかなあ、なのだけれど、なにしろ文章が魅力的なのでそこそこ面白く読めてしまう。さすがですね。

しかし江國香織さんて、家事得意そうだなあ。
完璧にインテリアをしつらえた部屋で、手の込んだお料理を手際よく作ってそうな気がする。あくまでイメージですが。(つまりわたしと真逆←おいおい)
ただ、ひじょうに感受性が強そうなのでいっしょにいるひとはたいへんかも、ともおもうけど。

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能力ってなに?

いま内館牧子さんの対談集「言うんじゃなかった…」を読んでいるのだけれど、(もう10年以上前に出版された本)、そのなかでダイエーの中内社長がすごいことを言っている。

「どんなに努力してもなかなか成果があげられない人っていますよね?そういうひとはどうすればいいんですか」という内館さんの質問に対し
「能力がない人は何もせんほうがいいんです。努力して残業とかされても電気代とかかかるわけやし。そういうひとのために福祉があるんやから。」(大意です)

内館さんはそれにたいし「うわーわたしダイエーに就職しないでよかった!」といってました。

たしかに人間の能力には格差があるし、優れた能力を持っている人は、できないひとがどうしてできないんだかわからないんでしょうねえ。
学歴だけで教員になったひととかもそうかも。

こういうひとばかりだと、生きがいをなくした人が巷にあふれ、殺伐とした世の中になるだろうな、とこれといった能力を持たないわたしはおもうのでした。

 

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「博士の愛した数式」

「博士の愛した数式」 小川洋子 著 を読む。

主人公は小学生の子持ちの家政婦。彼女は派遣先で記憶障害の元数学者「博士」と出会う。
彼の記憶は80分しかもたないので、会うたびに初対面の挨拶を繰り返し、そのからだには常に記憶しておかなければ困る事柄たちをメモにして貼り付けてある。。
博士にとっては数字および数式にかんする薀蓄がコミュニケーションの手段なのだが、しだいに主人公の家政婦も、そして小学生の息子も(博士はこどもに対して無条件で愛情を注ぐ人間だった)博士と、その魅力的な数式の世界にはまりこんでいく。

あいかわらず無機質な文体という印象はあるものの、いままでよんだ小川洋子さんの小説とはことなり、あたたかみをかんじられる小説。好きなタイプの話だった。
数式に関しては、文系人間のわたしには「うーんむかし学校で習ったなあ」程度だったのだが、博士が噛んで含めるように説明してくれるのでアレルギーは起こさない。
わたしも主人公と同じく数字の不思議に驚嘆し、知識欲を刺激された。

しかし人間て、やはり知識欲がつよいのね。
高視聴率のテレビ番組にせよ、ベストセラーにせよ、なにか知識を与えてくれるものが多いもの。まあくだらないものもあるけれども…

映画も見てみようかな。あ、そのまえに「THE有頂天ホテル」を観にいかねば…

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「偽偽満州(ウェイウェイマンジョウ)」

「偽偽満州(ウェイウェイマンジョウ)」 岩井志麻子 著 をよむ。

岩井さん初読。ちょっとおどろおどろしいイメージがあって敬遠していたのだ。

舞台は昭和初期。美貌の女郎、稲子が犯罪者である「ピストル完次」と恋に落ち、満州に高飛びする。しかし男に売られ、異国の地で単身生き抜いていくのだが…

独特の歯切れのよい粋な文体で、一気に読ませる。
筋だけ見ると悲惨だし陰気な感じがするけれども、その文体のせいかつねに俯瞰しているような突き放した感じがあり、さほど悲惨な感じはうけない。
そして主人公稲子の、騙し騙されながらも自分だけをたよりにどこまでもつよくしたたかに生き抜いていく姿には圧倒される。

登場人物のだれにも感情移入できないけれど、非日常的な世界は堪能できる。
このところ日常的な話ばかり読んでいたからよけいかな。

ちなみに今は岩井さんのエッセイを読んでいますが(志麻子のしびれフグ日記)、かなり、ヘンなひとですね、このひと…笑えるけど。

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冷めない紅茶

「冷めない紅茶」 小川洋子 著 を読む。

小川洋子さんはむかーしに一冊読んだ。芥川賞をとった「妊娠カレンダー」。もう10年以上前かな。
たしか妊娠した姉の月齢がすすむにつれ残酷な想像を募らせていく、という話だったと記憶している。
なんか主人公が暗くて、いつも人に対して悪意を抱いていて、(たとえば姉婿にたいしては「彼は当たり前のことをさも親切そうに言う癖がある」などと評する)後味がわるかった。
で、その後ほかの作品は読む気にならず読んでいなかったのだが、「博士の愛した数式」がベストセラーになったしまた読んでみるかと手に取った。
ううーん。やっぱりあまり後味よくない。
中篇2作。1作目はそれほどでもないけど、2作目はなんだかやーな読後感の話。
乳児院で育った(といっても彼女の両親はその乳児院の経営者)鬱屈した娘が、その施設にいる赤ん坊に敵意を抱いて虐待する、という内容なんだもの。
前述の吉本ばななさんとは対象的に、この人は他人とあまり積極的にかかわらない人なのかな、という印象を受けた。
まあ完璧に曇りなく健全、という人はいないだろうし、そういうだれもがもっている残酷さ、とか捻じ曲がった心、とかそういうものを表現しているんだとは思うけど、それをさあ、と見せられたいかといわれれば、わたしはあまり見たくはない。

「博士の愛した数式」は薦めている人も多いし、こんど読んでみようと思っているけど。

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